コーヒー生豆に含まれている主な多糖類である、ガラクトマンナン、アラビノガラクタン、セルロース、ペクチン、アラバンについて調べて見ました。

食品多糖類―乳化・増粘・ゲル化の知識 (Food Technology)
- 作者: 国崎直道,佐野征男
- 出版社/メーカー: 幸書房
- 発売日: 2001/11
- メディア: 単行本
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★ガラクトマンナン
マンノースが幾つも結合している直鎖(じゅずつなぎになっている)に、ガラクトースが所々で結合している多糖類。
ガラクトマンナンは、一部の植物と菌類にだけ含まれているとされています。
食品の増粘剤・安定剤に利用されていて、ガラクトースの多い少ないによって、水への溶け方が違ってくるそうです。
ガラクトースが多ければ冷水にも溶けますが、少なければ熱水でなければ溶けません。
コーヒー生豆の強靭さの主因となっているのが、このガラクトマンナンだと考えられているようです。
★アラビノガラクタン
単糖のアラビノースとガラクトースが結合している多糖類で、良質な水溶性の植物繊維です。
コーヒーの細胞壁を構成している成分の一つで、便のとおりをよくする作用を持つ植物繊維です。
起泡や泡を安定させる作用を持っています。
コーヒー抽出液に含まれているアラビノガラクタンのガラクトース対アラビノースの質量比(モル比)ですが、コーヒー生豆で3:1、焙煎したコーヒー豆で2.5:1だとする報告もあります。
コーヒーの香りや風味を、アラビノガラクタンの中に閉じ込めことができるといわれています。
インスタントコーヒーに、コーヒーの香りや風味を添加する手段として、コーヒー豆に含まれている炭水化物(多糖類)のそのような性質を利用する方法が研究されているようです。
コーヒー浸出液の口あたりには、その粘度が関係しているのだと思います。
コーヒー浸出液の粘度は、コーヒー浸出液に含まれるアラビノガラクタンなど、親水コロイドの炭水化物(多糖類)の影響を受けているのだと思います。
ようするに、コーヒー浸出液の口あたりは、コーヒー浸出液に含まれる高分子量成分に左右されるということなのだと思います。
コーヒー由来のアラビノガラクタンですが、珍しい流動学的性質を持っているとする報告もあります。
★セルロース
セルロースは繊維素とも呼ばれている天然高分子で、炭水化物(多糖類)の一種です。
植物の細胞膜の構成要素で、自然界に最も多量に存在している天然高分子で、草や木のからだを支えています。
コーヒー豆の細胞壁を構成する主成分で、アラビノガラクタンやガラクトマンナンなどと、コーヒー豆の細胞壁を構成しています。
βーグルコースが直鎖状にたくさんつながっている天然高分子で、冷水にも熱水にも溶けないということです。
人はセルロースを分解する酵素(セルラーゼ)を持っていないので、セルロースを消化分解することができません。
★ペクチン
糖および酸、または酸性の果汁とともに加熱するとゲルを作る物質を、1825年にフランスのブラコノーが「ペクチン」と命名しました。
高等生物の細胞の中葉と一次壁に多く存在していて、分子量が50000~100000といわれています。
ペクチンは、メチル化ポリガラクツロン酸多糖で、植物の細胞壁を構成しています。
基本骨格はグリコシド結合したガラクツロン酸鎖ですが、カルボキシル基の一部はメチルアルコールでエステル化されているようです。
ペクチンは、ガラクツロン酸のほかに、ガラクトース、グルコース、アラビノース、ラムノース、キシロースなどで構成されているといわれています。
コーヒー生豆に含まれているペクチンは、ガラクツロン酸とそのメチルエステルの重合物で、それにラムノースやキシロースが結合しているとされています。
コーヒー生豆には、ペクチンが約3%含まれています。
【糖誘導体】
糖誘導体とは、糖から誘導されて、糖の一部分が変化して生成した糖です。
コーヒー生豆に関係する主な糖誘導体としては、ウロン酸のガラクツロン酸、糖アルコールのキシリトール、デオキシ酸のラムノースが知られています。
【ガラクツロン酸】
ガラクトースが酸化されたウロン酸。
幾つかのガラクツロン酸が結合して重合体を構成しているポリガラクツロン酸は、ペクチンの主成分。
★アラバン
アラバン(アラビナン)は、植物の細胞壁を構成している多糖類で、水に不溶です。
アラビノースという単糖が脱水結合(脱水縮合)している多糖類で、アラビナンとも呼ばれているようです。
アラバンを構成しているアラビノフラノースは、フラン様の五員環持っているアラビノフラノースです。
アラバン(アラビナン)はアラビノフラノースで構成されている多糖類で、ガラクタンなどとともにペクチン質を構成しています。