品質変換を目的とする食品の加工処理操作として、物理的な品質変換操作と化学的・生物的な品質変換操作が知られています。
物理的な品質変換操作としては、機械的・拡散的・熱的な操作で、洗浄・浸漬・ろ過・抽出・冷凍・解凍・濃縮・乾燥などの操作が知られています。
化学的・生物的な品質変換操作としては、何らかの反応を伴う操作や化学反応・酵素反応・微生物反応・殺菌・クッキングなどの操作が知られています。
筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)は、コーヒー豆焙煎の品質変化操作では、化学的・生物的な品質変換操作が主人公で、物理的な品質変換操作が重要な脇役として主人公を支えていると思っています。
食品原料は多くの成分で構成されていて、複雑な構造・性質を持っています。
もちろん、コーヒー豆も、そのようになっていると思います。
食品の品質変換操作では、目的とする品質変換中に、目的としない品質変換が発生することもしばしばあると思っています。
同じ褐変反応でも、焙煎中のコーヒー豆が褐色・茶色に色づいて行くのは、目的とする品質変換です。
しかし、皮を剥いた(むいた)リンゴをそのまま放置しておくと、褐色になっているのは目的としない品質変換です。
コーヒー豆の焙煎は、化学反応とクッキング(加熱調理)で、硬くて草のニオイのするコーヒー生豆を香り高くて、挽けば簡単に粉になる焙煎コーヒー豆に品質変換する加工処理操作だと、筆者は理解しています。
食品の品質変換の良否は、その品質変換速度に支配される割合が高くなると言われています。
コーヒー豆の焙煎も、品質変換速度にその良否を支配されていると思っています。
筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)は、小さな小さなパパママロースター(コーヒー豆自家焙煎店)の店主です。
30数年、自家焙煎コーヒー豆小売商売をして来ているので、コーヒー豆の焙煎については、プロを自認しています。
プロを自認しているわけですから、自分なりの焙煎プロファイルを持っていて、その焙煎プロファイルを基にしてコーヒー豆を自家焙煎しています。
筆者は、コーヒー豆焙煎中のデータを小まめに収集して、それを基にして焙煎プロファイル図を作成した事はありません。
もちろん、焙煎プロファイル図(ローストカーブ図)作成ソフトも使ったことがありません。
ただし、コーヒー豆焙煎中のデータを手作業で大雑把に収集する作業は、コーヒー豆を焙煎する回数(バッチ)毎に実施しています。
そして、時々にですが、そのデータを積算してエクセルを使って、大雑把なローストカーブ図を作成したりしています。
筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)がコーヒー豆自家焙煎商売の世界に飛び込んだ30数年前には、焙煎プロファイルや焙煎プロファイル図(ローストカーブ図)という考え方が存在していなかったと記憶しています。
コーヒー豆の煎り具合を色で判別する、焙煎度という考え方だけが存在していました。
現在は、焙煎プロファイル・ローストカーブ図の時代です。
コーヒー豆焙煎反応は、コーヒー豆焙煎中の品質変換速度に依存していると思います。
その変換データを小まめに収集・測定して速度式を作成・計算すれば、サードウェーブコーヒーやスペシャリティーコーヒーの焙煎に登場する理論的な焙煎プロファイル図を作ることができると思っています。
手作業では難しいわけですが、焙煎プロファイル図作成ソフトを使えば、理論的な焙煎プロファイル図(ローストカーブ図)を簡単に作成できる時代になっています。
パソコンと焙煎機をつないで、熱電対や温度ブローブなどで温度データを測定・収集して、測定・収集したデータで速度パラメータを算出して、そのパラメータを速度式に当てはめて焙煎プロファイル図を作成するという作業を、焙煎プロファイル図作成ソフトがしてくれていると想像しています。
ちなみに、筆者は、焙煎プロファイル図は、焙煎中のコーヒー豆品質変換速度を表現している(見える化している)図だと理解しています。
筆者(年老いた珈琲豆焙煎屋)の焙煎プロファイルは、これまでの経験・技術の積み重ねに基づいて作成している大雑把な代物です。
焙煎中に発生するすべての現象を理論的に解明して、温度などの速度データを小まめに測定して、速度式を求めて速度論的に取り扱った焙煎プロファイル図を作成する能力を、筆者は持ち合わせていません。
吹けば飛ぶようなコーヒー豆自家焙煎店のおやじで高齢の文科系人間です。
研究者で無いわけですから、当然だと考えています。
それに、筆者は、まあまあ忙しく働いています。
コーヒー豆焙煎機と手持ちのパソコンを接続して、焙煎反応の速度データを収集して、市販の焙煎プロファイル図作成ソフトを使って、焙煎バッチの度毎(たびごと)に1回・1回焙煎プロファイル図を記録保存する時間的・経済的・精神的余裕もありません。
今のところ、これまで30年間の経験・技術・知識の積み重ねに基づく大雑把な焙煎プロファイルで十分に対応できています。
代表的な物理的性状や成分変化だけを大雑把に測定して、大雑把で総括的な速度式(焙煎反応の速度)を頭の中で描きながら、自分なりの焙煎プロファイルを作っています。
そのプロファイルを基にして焙煎プロファイル図を作成したことはありませんが、大雑把な焙煎プロファイル図なら何時でも作れます。
(参考)この記事と、ほぼ同じ内容のテキストを、キンドルでセルフ出版している電子書籍「コーヒー豆自家焙煎談義(第4集)」に収録しています。
【目次】
- 【1】コーヒー豆焙煎反応速度式を考える際の問題点
- 【2】コーヒー豆焙煎反応スピードの測定
- 【3】コーヒー豆焙煎反応速度式を考える
- 【4】汎用的な経験的速度式
- 【5】コーヒー豆焙煎の操作計算
- 【6】コーヒー豆焙煎の操作計算式
- 【7】簡単にまとめると